換羽期の症状と対応|栄養(タンパク質)が多い餌(ペレット)やネクトンBiotinに切替えましょう

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  • ペットの鳥の羽がたくさん抜けているけど病気かな?
  • 換羽中のインコがいつもより元気がない気がして心配
  • 換羽中は何に気を付ければいい?

 

こんな疑問に答えます。

 

この記事では、鳥の換羽についてお話します。

換羽とは鳥類の羽が生え変わる生理現象です。

換羽期は、新しい羽を作り出すための栄養(タンパク質)がたくさん必要になり、体力を消耗するため、体調を崩しやすい時期です。

いつも以上に健康状態の観察や栄養の管理が重要になります。

 

この記事を読めば、換羽期の必要な対応が分かります。

愛鳥のために適切な食事や環境を整えて、鳥さんにとってつらい時期を一緒に乗り越えてあげましょう。

 

 

換羽とは:鳥の羽が生え替わること

全身の羽が抜け代わる生理現象です。

古い羽が抜けて新しく羽が生えてきます。

 

鳥さんにとって、羽はとても大事なものです。

自然界では、うまく飛べなくなってしまうと命にかかわります。

そのため、定期的に生え変わるようにできています。

 

換羽は、鳥さんにとって体調を崩しやすく、体がしんどい時期です。

鳥さんにとって特別な時期だと認識して、いつも以上に鳥さんの様子を気に掛けるようにしてあげてください。

 

換羽中の我が家のセキセイインコ
f:id:hatarakitakunai30:20200602145210p:plainなんとなく具合が悪そうな顔をしています。

お顔に新しく生えてきた羽(筆毛)がつんつんしてきています。

 

ケージの周りはこんな感じ

f:id:hatarakitakunai30:20200602145543j:plain

 

換羽の読み方:かんう

換羽の読み方は「かんう」です。

換羽のことを別名「とや(鳥屋)」と言います。

 

換羽期に必要な対応

高タンパク質な食事を与える

羽を作るために必要な栄養はタンパク質です。

換羽期用の高タンパク質な食事メニューに変更する必要があります。

具体的な食事メニューについては次章以降で解説します。

 

元気・食欲の変化を観察

換羽期は体調を崩しやすい時期です。

いつも以上に注意深く鳥さんの様子を観察するようにしてください。

 

毎日体重をはかる

換羽中はできるだけ毎日体重をはかりましょう。

換羽中は体重が減少しやすいです。

急激に体重が減るようであれば病院へ連れて行ってください。

 

膨らんでいたら保温する

羽が抜けると断熱機能が低下し、寒さに弱くなります。

換羽中は温度が低くなりすぎないように注意しましょう。

保温は鳥さんの様子に合わせて行います。

膨らんでいる(寒がっている)ときは保温電球などの保温器具で保温してください。

(参考)保温方法

 

明らかに具合が悪そうであれば病院へ連れて行く

換羽は生理現象とは言え、鳥さんにとっては一大イベントです。

換羽がきっかけで体調を崩し病気になることも少なくありません。

「いつもと違う」「なんだかおかしい」と感じたら迷わず病院へ連れて行ってあげましょう。

換羽期だけ必要な栄養剤(ネクトンBiotin(旧ネクトンBIO))を必要な量だけ処方してもらうこともできます。

 

換羽期は換羽期用の食事メニューに変更しよう

換羽中に必要な栄養はタンパク質です。

新しい羽を作るための材料として、通常の約2倍のタンパク質が必要になるため、換羽期用の食事メニューに切り替える必要があります。

 

飼い鳥の餌に推奨される栄養含有量は、普段はタンパク質が12%ですが、換羽中に必要な栄養含有量はタンパク質20%になります。

 

シード食の場合

換羽期用の栄養補助食品(サプリメント)を使いましょう。

ネクトンBiotin(旧ネクトンBIO)がおすすめです。

 

 

 

ネクトンBiotinは基本的には換羽期だけ与えるため消費量が少ないです。

また、ネクトンは開封後2~3カ月で使い切った方が良いので、次の換羽期までもたないことが多いかと思います。

よって、分包タイプの方が使い勝手が良くおすすめです

 

ネクトンは飲み水に混ぜるかごはんに振りかけて与えます。

水に混ぜた方が決まった濃度で与えられるので良いと考えています。

 

ただし、ネクトンを混ぜると水が傷みやすくなるので、できれば1日に2回、お水を交換してあげましょう。

 

www.momo-birdclinic.com

 

 

ペレット食の場合

普段のごはんがペレットであれば、換羽期用ペレットを活用しましょう。

換羽期用ペレットに切り替えるor換羽期用ペレットを混ぜて与えるのがいいと思います。

換羽期用ペレットは「高タンパク」のものを選びましょう。

 

換羽期用ペレットの選び方

  • 高タンパク質である(栄養成分表示を見てタンパク質が20%前後のものを選ぶ)
  • 換羽期向けである(商品説明などの表示を確認)

 

換羽期に必要な栄養はタンパク質です。

脂肪をたくさん摂る必要はありません。

ペレットを選ぶ際にはご注意ください。

 

おすすめの換羽期用ペレットは、ハリソンのハイポテンシーラウディブッシュのブリーダーです。

 

ハリソン:「ハイポテンシー」

 

 

ラウディブッシュ:「ブリーダー」

 

 

※ラウディブッシュのペレットには「ブリーダー」と「ハイエネルギーブリーダー」があります。「ハイエネルギーブリーダー」は「高タンパク・高脂肪」です。別物ですのでご注意ください


換羽期用ペレットを初めて与える場合、急にごはんを変えて食べなくなってしまうと大変なので、鳥さんがちゃんと食べているか観察し、体重が減っていないかみながら徐々に切り替えてください。

 

換羽による症状

換羽中は以下のような様子や症状が現れることがあります。

 

  • いつもより元気がない
  • ごはんを食べる量が少ない
  • いらいらして攻撃的になる
  • 羽を膨らませて具合が悪そうに見える
  • 体重が減少する
  • おえおえと気持ち悪そうな仕草をする(吐き気)
  • 尿の量が多くなる

 

羽を作るのに必要な栄養はたんぱく質です。

換羽中にタンパク質が不足すると、筋肉を壊して羽を作る材料にしてしまいます。そのため体重が減りやすく、体調を崩しやすくなります。

 

羽は空を飛ぶためだけのものではありません。

羽には体の熱を逃がさない保温性があります。

そのため羽が一気にたくさん抜けてしまうと体が冷えやすくなり、

体が冷えることで吐き気が出ることがあります。

 

換羽期は甲状腺ホルモンがたくさん分泌されて代謝が増加し、肝臓でたんぱく質をたくさん作ります。

こうした体の中の反応の結果として生理的に多尿となります。

 

換羽中になにかしらの症状が出たときに、

  • 治療や看護が必要な状態なのか?
  • 正常な範囲内なのか?
  • そもそも原因が換羽なのか?

飼い主さんが判断するのは難しいです。

 

換羽中の症状の変化には個体差があります。

また、鳥さんの生活環境や健康状態によって違いがあります。

 

少しでもおかしいと感じたら病院を受診することをおすすめします。

 

換羽期の免疫力低下により、感染症にかかることもあります。

くしゃみや鼻水など風邪のような症状が見られたら、迷わず診察を受けてくださいね。

 

元気食欲低下、体重減少、吐き気などは、メガバクテリアによる症状が出ているケースもあります。
定期的な健康診断で病気を隠し持っていないか検査を受けておくことが大切です。

※郵送でメガバクテリア検査を行っています

 

 

換羽と病気の見分け方

〇換羽は全身の羽が抜けます

×部分的に抜けていることが分かれば病気を疑います。

 

〇換羽はすぐに新しい羽(筆毛)が生えてきます

×新しい羽が生えてこないようなら病気の可能性が高いです。

 

〇換羽により自然に抜け落ちた羽の根本は、色が半透明な白色、形はなめらかでキレイな状態です

×抜けた羽根の根元の色が黒色だったり形がいびつであれば病気の可能性が高いです。

 

病気かもしれないと察知したらすぐに病院へ連れて行ってあげましょう。

羽が抜ける病気の一例

・毛引き

・内分泌疾患(甲状腺の病気)

・外傷、事故、パニック(特にオカメインコ

・皮膚病

感染症(PBFD)

 

 

「病気との見分けがつかない」「病院へ行くべきか聞きたい」など個別のご相談はオンライン相談でお受けします。

 

正常な換羽の頻度は年1~2回

発情の周期やホルモンの働きによって換羽が起こると言われています。

換羽の正常な頻度は鳥の種類によって違います。

最低でも年1回起こり、年に2回起こる種類が多いです。

 

インコ・オウムの換羽は、発情が終わると羽が抜けはじめ、新しい羽が生えそろうまでの数か月間、換羽期が続きます。 

 

ペットとして屋内で飼われている鳥では、季節感を感じにくいため、換羽が不規則に起こることもよくあります。

 

 

換羽の頻度が多いなら「過発情」の可能性が高い

  • 年に2回以上換羽が起こる
  • 換羽が終わったと思ったらまた羽が抜け始めた
  • だらだらと羽が抜け続けている

 

このような状況は要注意です。

 

換羽=発情が終わったサインです。

しょっちゅう換羽が起こる=しょっちゅう発情している可能性が高いです。

 

換羽の頻度が多い鳥さんには、病気の予防のために発情抑制が必要です。

詳しくは「発情を抑制する方法」をご覧ください。

 

 

また、換羽の頻度が異常になる原因は、発情だけではありません。

鳥さんが生活している環境の明るい時間と暗い時間の変化(光周期)が乱れている場合や、ホルモンを作る臓器の病気が隠れている場合にも、換羽が正常に起こらないことがあります。

 

だらだらと換羽が続き、その状態が日常化していませんか?

 

日常的に鳥さんの羽が何枚も抜け落ちることはありません。

長期的に換羽が続くのは異常な状態です。

 

もし異常な状態に気づいたら、動物病院へ相談してくださいね。

 

換羽は健康管理のバロメーターになる

 

換羽は鳥さんの健康管理をするうえで重要な情報です。

換羽が起きたら時期を記録しておきましょう。

記録に残しておけば、確実に換羽の発生頻度を把握することができます。

 

換羽は通常発情のあとに起こるので、

発情の様子とあわせて記録を付ければ健康管理に役立ちます。

 

記録を付けてみて、

年に何度も発情と換羽を繰り返しているようであれば、

発情の抑制が必要です。

 

鳥さんが幸せに長生きできるように、

まずは現状をしっかりと把握するところから始めましょう。


新しく生えてきた羽(筆毛)について

新しい羽は、

サヤに包まれた筆のような状態で生えてきます。

 

新しく生えてきた羽は筆毛と言って

つんつんしたトゲの様な見た目をしています。

 

筆毛は優しく指でほぐしてあげることに問題はありません。

鳥さんが自ら求めてきた場合はほぐしてあげましょう。

顔回りは自分のくちばしでほぐせないので鳥さんも喜びます。

 

ただし、

成長途中の筆毛の中には血管が伸びています。

この状態で筆毛の根元付近で折れてしまうと

大量に出血することがありますので注意が必要です。

オカメインコさんがパニックになって暴れてしまった際に

ぶつけて折れてしまうことがしばしばあります。

 

筆毛からの出血は、羽を根元から抜かないと止まりません。

 

もし、

おうちで筆毛からの出血が起きてしまったら、

折れてしまった羽を特定し、

それをピンポイントで抜く。

難しければ、

出血している部分を手で抑えて、

急いで病院へ連れて行ってください。

 

筆毛からの出血時に爪用の止血剤(クイックストップなど)は決して使わないでください!!

このような止血剤は化学的にやけどを起こします。

爪以外の部位に使用してはいけません。

鳥さんが激痛で苦しむことになります。

 

まとめ:換羽期は食事メニューに切り替えて温度と体調を管理する

 

換羽のポイント! 

・換羽期は全身の羽が生え変わる鳥さんにとってつらい時期

・体調管理、温度管理、食事メニューの変更が必要

・羽を作るのに必要な栄養はタンパク質

・ペレット食なら換羽期用ペレットに切り替え

・シード食ならネクトンBiotinを使用

 

 

以上に気を付けながら、鳥さんと一緒に換羽期を乗り越えてあげましょう。

 

鳥さんがイライラして怒りっぽくなることもありますが、鳥さんができるだけ気持ちよく過ごせるように、飼主さんも換羽とうまく付き合っていけるといいですね。

 

最後までご覧いただきありがとうございました。

 

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