【鳥さん】アスペルギルス症について【カビによる呼吸器疾患】

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本記事では、アスペルギルス症についてお伝えします。

 

アスペルギルス症アスペルギルスというカビ(真菌)によって主に呼吸器をおかされる病気です。

肺炎や気嚢炎(気嚢:鳥さん特有の袋状の呼吸器)を起こします。

 

飼い主さんでも、気付くことができる症状や予防方法等をお伝えしますので、参考にしていただけると幸いです。

 

 

アスペルギルス症とは

アスペルギルス症は、アスペルギルスというカビ(真菌)が鳥さんの体の中で増殖し主に呼吸器をおかされる病気です。

肺炎や気嚢炎(気嚢:鳥さん特有の袋状の呼吸器)を起こします。

 

免疫力が低下すると発生しやすく、健康な鳥さんでは起こりにくい病気です。

免疫力の低下は、換羽環境の変化他の病気ストレスなどで起こります。

 

ほとんどの鳥で感染する可能性がありますが、特にヨウム、ボウシインコ、オカメインコ、ラブバードで発生が多いとされています。

 

原因

アスペルギルス(Aspergillus属)というカビ(真菌)が原因です。

アスペルギルスは、環境中にふつうに存在するカビで、免疫力が低下したときに体内で増殖し病気を起こします。(日和見感染)

 

糞で汚染された牧草やチップ、シード、巣材、湿った餌などがあり、湿度や温度が高くなると、アスペルギルスが増えやすくなります。

さらに換気が不十分で密な状態で多くの鳥を飼っているとアスペルギルスが増えやすい環境となります。

 

アスペルギルスが増えた環境で、免疫力が低下した鳥さんがカビを吸い込むと感染してしまいます。

 

症状

主に肺炎気嚢炎(気嚢:鳥さん特有の袋状の呼吸器)を起こします。

重症の場合、呼吸器だけでなく他の内臓までアスペルギルスが広がり様々な症状を引き起こします。

 

アスペルギルスの増える場所や病気の進行度で症状は異なりますが、目に見える主な症状は以下のとおりです。

 

  • 呼吸困難
  • 呼吸が早くなる
  • 口を開けて呼吸する(開口呼吸)
  • テイルボビング(呼吸に合わせて尾を上下する様子=呼吸が苦しい様子)
  • 呼吸時に音がする
  • 声の変化
  • 声が出なくなる
  • 鼻水
  • 結膜炎
  • 元気食欲の低下
  • 尿酸の色が緑色になる(尿酸:本来白い液状の尿)
  • 多飲多尿(水を異常に多く飲み、尿も多くなること)
  • 皮膚炎
  • 神経症状(運動失調、ふるえ、斜頸(首をかしげた状態になること)など)
  • 突然死

 

検査

アスペルギルスは、早期発見が難しく、末期に治療を開始しても治りにくい病気です。

 

検査としては、血液検査レントゲン検査遺伝子検査(PCR検査)培養検査(検体を培養してアスペルギルスの存在を確認する検査)を行います。

 

遺伝子検査(PCR検査)や培養検査は、口の中のぬぐい液や便を材料として検査した場合、アスペルギルスは環境中にふつうに存在するカビのため、陽性であっても、必ずしもアスペルギルス症であるとは言えません。

 

血液を検体とした遺伝子検査(PCR検査)で陽性となった場合、アスペルギルス症が強く疑われます。

 

治療

抗真菌剤(カビをやっつける薬)で治療を行います。

飲み薬や注射だけでなく、ネブライザー(薬を霧化して気管支や肺におくる医療機器)で抗真菌剤の吸引を行います。

 

予防

  • 適切な餌(ビタミンを適切に与えることで鳥さんの呼吸器粘膜を健康な状態にする)
  • 清潔な飼育環境(アスペルギルスの増殖を防ぐ)
  • ストレスの軽減(鳥さんの免疫力の低下を防ぐ)

 

ビタミンを適切に与えるには、ペレットがおすすめです。

シード食の場合は栄養補助食品(ネクトンなど)を使用しましょう。

 

関連記事:ペレットについて

関連記事:ネクトンについて 

 

ケージ内を清潔に保ち、カビを発生させないことが大切です。

定期的にケージを丸洗いし、エサ入れや水入れは毎日洗浄して、おもちゃなども清潔に保つことが予防になります。

 

アスペルギルス症は免疫力が低下すると発生しやすい病気です。

免疫力の低下は、換羽、環境の変化、他の病気、ストレスなどで起こります。

できるだけストレスのないよう気を付けてあげましょう。

 

終わりに

アスペルギルス症は、早期発見が難しく、末期から治療を始めても治りにくい怖い病気です。

しかし、健康な鳥さんがかかることはありません。

アスペルギルスが増えにくいよう飼育環境をきれいな状態に保ち、鳥さんの免疫力が低下することがないよう、健康でいられるように適切な飼い方をしてあげましょう。

 

 

最後までご覧いただきありがとうございました。

 

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【鳥さん】オウム病について【鳥から人にうつることがある感染症】

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本記事では、オウム病についてお伝えします。

 

オウム病は、オウムという名前がついていますが、オウムだけがかかる病気ではありません。

また、鳥だけでなく、様々な動物でも感染が確認されています。

 

鳥から人にうつることがある病気ですが、飼い鳥が感染しているかどうかは検査で確認することができます。

オウム病について正しい知識を持つことが重要です。

 

本記事では、鳥のオウム病について主にお話します。

 

 

オウム病とは

鳥のオウム病(鳥クラミジア症)は、細菌による感染症です。

 

オウム病という名前がついていますが、鳥類全般がかかる可能性があります。

 

飼い鳥では、特にオカメインコセキセイインコで感染率が高いとされています。

 

国内の飼い鳥での検出率は10%程度、健康な鳥の陽性率は6%前後との報告があります。

 

オウム病は、鳥から人にうつることもある人獣共通感染症です。

 

文に感染していても症状が出ないことの方が多いため、人へうつることを避けるためには、遺伝子検査(PCR検査)で感染の有無を確認することが重要です。

 

 

原因

オウム病(鳥クラミジア症)は、クラミジアChlamydophila psittaci クラミドフィラ シッタシ)という細菌が原因の感染症です。

 

細菌が口や鼻から入ることで感染します。

 

オウム病にかかっている鳥の糞や分泌物が乾燥し細かい粒になったものや、それらが付着した羽毛を吸引することで、細菌が体内に入り感染します。

 

また、糞や尿が入った飲み水や餌の摂取や、親からヒナへの給餌によっても感染します。

 

症状

様々な症状が出ますが、オウム病に特徴的な症状がないため、症状だけでは他の病気との区別が難しいです。

以下の症状が出た時は、オウム病である可能性を考えるべきです。

 

  • 元気食欲の低下
  • 羽を膨らませている(膨羽)
  • 体重減少
  • くしゃみ
  • 鼻水
  • 結膜炎
  • 涙が出ている
  • 呼吸困難
  • 尿酸(本来白い液状の尿)が黄色や緑色になる
  • 下痢
  • 多飲多尿
  • 突然死
  • けいれん

 

しかし、症状が出ないことの方が多く、症状が出ていなくても、他の鳥や人間にうつるため、注意が必要です。

 

また、症状が出ていなかったのに、免疫力の低下などがきっかけで数年後に突然発症するケースもあります。

 

検査

遺伝子検査(PCR検査)を行います。

 

遺伝子検査の検体は、便、後鼻口スワブ(口の奥の部分をぬぐったもの)、総排泄腔スワブ(おしりの穴をぬぐったもの)、血液などです。

 

しかし、遺伝子検査で陰性であっても必ずオウム病でないとは言い切れず、その検査のときに採取した検体の中にはオウム病の原因細菌が入っていなかったということしか証明できません。

 

症状が出ている場合は、血液検査やレントゲン検査を行い、呼吸器症状や消化器症状の確認を行います。

 

治療

抗生剤で治療を行います。

 

オウム病の原因細菌は細胞内でしか増殖できない特殊な細菌で、細胞内に潜伏している間は薬が届かないためのため、投薬は長期にわたります(45日間)。

 

症状が軽度であれば、早期治療で予後は良好です。

 

感染した鳥から他の鳥や人間にうつるのを防ぐため、感染鳥の隔離が必要です。

また、ケージなどの糞便に汚染されたものは毎日、清掃・消毒が必要です。

清掃は人にうつらないよう手袋やマスクを着用して行う必要があります。

 

 

予防

遺伝子検査で感染していないことを確認し、感染が確認された鳥は隔離して治療をすることです。

新しく鳥をお迎えしたら健康診断とあわせてオウム病の遺伝子検査を行うと安心です。

 

また、鳥との濃厚接触は避け、鳥と触れ合った後は手洗いをしっかりと行いましょう。

 

人間のオウム病について

 

オウム病は鳥から人間に移ることのある病気です。

 

国内では年間30人前後の感染が報告されています。

 

ヒトに感染すると、突然の発熱、頭痛、全身倦怠感、食欲不振、筋肉痛、関節痛、咳などのインフルエンザ様症状が出ます。

 

治りにくい咳や息苦しさなどの症状を感じたら、オウム病を可能性の1つして疑い、病院にかかり鳥を飼っていることを医師に伝えましょう。

 

特に免疫力の低下している人や妊婦さんは注意が必要です。

 

人間のオウム病について詳細はこちら:厚生労働省HP

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000154524.html

 

終わりに

オウム病は人にもうつることがある感染症です。

新しく鳥さんをお迎えしたら健康診断とあわせてオウム病の遺伝子検査を行うと安心です。

他の鳥さんがいる場合や、免疫力の低下している人や妊婦さんがいるご家庭では特に注意しましょう。

 

 

最後までご覧いただきありがとうございました。

 

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【鳥さん】グリッドインパクションについて【塩土やボレー粉に注意】

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本記事では、グリッドインパクション(胃閉塞)についてお伝えします。

 

グリッドインパクションは、胃の中に砂(グリッド)が貯まり、通過障害を起こし、吐き気や嘔吐等が生じる病気です。

予防方法等についてお伝えしますので、愛鳥が病気にならないよう注意してあげてください。

 

 

グリッドインパクションとは?

胃の中に砂(グリッド)が貯まり、吐き気嘔吐などの症状が起こる病気です。

 

グリッドとは、鳥の胃(筋胃、すなぎも)の中の物理的な消化をするため砂のことです。

餌を丸呑みする鳥類は、胃の中でグリットにより餌をすり潰しています。

 

このグリッドは、消化に必要なものですが、大量に食べすぎてしまうと胃の中にぱんぱんに貯まり、「グリッドインパクション」という病的な状態になります。

 

小型のオウム類での発生が多く、特にコザクラインコボタンインコオカメインコに多くみられます。

 

原因

グリッドとなるもの

  • 塩土
  • ボレー粉
  • カットルボーンの硬い部分
  • ペレットに含まれる炭酸カルシウムの粒
  • 砂浴び用の焼き砂
  • サンドパーチの砂
  • 植木鉢の土など

 

塩土やボレー粉などのグリッドになるものを、急激に大量に食べてしまうことでグリッドインパクションを起こします。

 

症状

  • 吐き気・嘔吐
  • 食欲がなくなる
  • 元気がなくなる
  • 羽を膨らませる(膨羽)
  • 絶食便(食べ物を食べていないときに出る濃い緑色のべちゃっとした便)

 

検査

レントゲン検査でグリッドが胃の中に大量に貯まっていることを確認し診断します。

 

単純なレントゲン検査で写らない鉱物飼料以外の異物の場合は造影剤を飲ませてレントゲン検査をするケースもあります(グリッドインパクションではなく異物による胃閉塞の場合)。

 

治療

グリッドになるものの給与をやめます。

 

食事として、種子(シード)をやめ、流動食を与えます。

 

自力で餌を食べられる状態であれば、エンバク(オーツ麦)ペレットを食べさせます。

 

体力を維持しながら、自然にグリッドがすりつぶされ流れていくのを待ちます。

貯まっているグリッドがボレー粉の場合は1日待てば自然に溶け、流れていきます。

 

貯まっているグリッドが細かい粒の場合は、胃粘膜保護剤、消化器機能調整剤、潤滑剤を使用し、腸へ流れ出ていくように治療を行います。

 

排泄や溶解が難しい大きなグリットの場合は、手術で胃を切開し、外科的にグリットを摘出するケースもあります。

 

予防

予防方法は、グリッドとなるもの※を、急に食べすぎないようにすることです。

 

グリッドインパクションを起こした鳥さんは、再度起こす可能性が高いため、グリットは与えないようします。

 

※グリッドとなるもの

  • 塩土
  • ボレー粉
  • カットルボーンの硬い部分
  • ペレットに含まれる炭酸カルシウムの粒
  • 砂浴び用の焼き砂
  • サンドパーチの砂
  • 植木鉢の土など

 

特に塩土は、食べ過ぎると塩分の取りすぎにもなりますので、与えないことを推奨します。

 

推奨できる鉱物飼料は、カットルボーンの柔らかい部分です。

 

終わりに

グリッドインパクションは、予防できる病気です。

愛鳥のために正しい知識を持ち、グリッドになるものを、食べすぎないように気を付けてあげましょう。

 

 

最後までご覧いただきありがとうございました。

 

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